309号室。
マイは、受付で聞いた扉番号の前に立ち、念のためガラス窓から中を覗いた。
正面のソファには誰も座っておらず、端の方に中腰の千奈美がいるのが見える。
千聖とみやびは機器の陰になっていて、よくわからない。
「早く、入ろうよ!」
梨沙子に促され、ドアノブに手をかけて開いた。
「う、うわぁっ!」
千奈美の素っ頓狂な叫び声が響いた。引きつった顔でマイの顔を凝視する。
視線を奥に移動すると、ソファに逆向きで座るみやびを、背中から抱きしめている
千聖の姿があった。
みやびのスカートはまくり上げられていて、白いヒップと太腿が丸見えになって
いる。千聖の半ズボンを履いた腰が、みやびに押し当てられ小刻みに動いていた。
(な!なにやってるの?千聖?みやびちゃん?これって…)
梨沙子も目を丸くし、口に手のひらを当てその光景を眺めていた。
「あばばば……」と呟く声が漏れる。
千聖が強くねじ込むように股間をみやびに押し付け、彼女の背中に顔をうずめた。
「うぉっ、うぉっ」とくぐもるような嗚咽。
「あー、あ…、そうだぁ。言うの忘れてた…千聖」
廊下から流れるBGMの音量に、かき消されそうな千奈美の声。
マイは我に返ると、梨沙子を引っ張ってカラオケルームの中に入りドアを閉めた。
疲れた表情で振り向く千聖。少年の顔が、高速度撮影のように変化していく。
「いや、大勢の方が楽しいかなっ思って、ここに来る前に連絡したんだけど…
こういうことになっちゃって、結局まずかったかな…あはは」
少年はバッと、みやびから手を離し、腰を引いた。
「あっ…」
半ズボンのチャックから、飛び出したままのペニスが糸を垂らす。
剥けたピンク色の亀頭は2人の体液に濡れ、天井のミラーボールの光りを厭らしく
反射していた。慌てた千聖はよろけて、奥のソファに倒れこむ。
「えっ…やっ!やだっ、なんでマイが、ってぇ梨沙子もいるんじゃない!」
長い顔をさらに長くさせて、あんぐり開けた口をパクパクと開閉するみやび。
乱れていたスカートを整える。「い、いやこれはね!千聖が無理矢理…」
みやびが言い終わらないうちに、梨沙子が突き進んで、声を荒げた。
「み、みやー!そういうことは、あたしだけだもん!千聖ぉ!なんでみやに
するの!?なんで?あたしだけって言ったじゃんかぁ!」
マイは耳を疑った。あまり要領を得ない日本語であったが、どうやら千聖は
梨沙子にも「こういうこと」をしていたようである。
(…あたしには「マイちゃん、ボクの目は君の瞳しか映さないんだよ」とか
言ってたんだけど…コイツは…裏で…)
マイの瞳に憤怒の光を見た千聖。ソファから飛び起きると、床に正座をして
いきなり土下座を始めた。
「いやごめん!マイちゃん、梨沙子!これには色々と深い事情があって、どう
してもこうならざるを得ない展開になってしまったというかなんちゅう恋を
やってるっちゅうのうっていうか…」
「そうなの?みやびちゃん?」
マイの問いに首をブンブンと振るみやび。次に千奈美に顔を向ける。
藤本美貴とガンの付け合いで一歩も引かないだけのことはある。まさに般若。
千奈美は、しどろもどろになって話し始めた。
「え、えーと、千聖がみやのアソコを見たいって言って…それで見せたら、こんな
ことをし始めちゃって…あたしはオロオロとしてたんだけど」
オロオロじゃなくてアンアンだろう!千聖は心の中で千奈美を殴りつけた。
「とにかく、千聖が悪いのは確かのようね。梨沙子も、こういうことされた
ことがあるの?」
梨沙子は顔を赤らめた。「…だって、気持ちいいんだもん。りーは悪くないもん」
マイは天を仰いだ。どうやらこの分だと、℃-uteの他のメンバーともエッチな
行為に及んでいるのは確実である。2人だけの秘密の時間、と思って恥ずかしい
のをこらえていたのが馬鹿馬鹿しくなってきた。
そして、自分だけがそういうエロな輪から疎外されていた事に寂しさも感じ、その
複雑な感情がすべて怒りに転化して、千聖へと降り注いだ。
「千聖!」
「はいっ!」
少年は、マイの射抜くような視線に、正座したまま背筋を伸ばし答えた。
「許して欲しい?…あたしとまた…エッチなことしたい?」
腕を組んだまま千聖に近寄り、仁王立ちになる。マイのスカートが、千聖の鼻面に
擦らんばかりだ。少し視線を落とせば、新中学一年生女子の、細長くシミ一つ無い
滑らかなふくらはぎが見える。汗混じりの芳しい思春期の体臭。
「し、したいです…。マイちゃんと…エッチが…したいです」
うな垂れたまま、マイのスカートに顔を突っ込む千聖。両手を回して、マイの太腿を
つかみ、スーハーと匂いを吸い込んだ。
(あー久しぶりのマイちゃんの匂いだ…、うー、これは手放せないよね)
「うわぁ……」
「マ、マジ……」
「ちょ、ちょっと、マイちゃん…」
布地に頭を突っ込んでいる千聖を無視して、マイがテーブル上で何かをしていた。
(ん?何やってんだろう…マイちゃん)
「千聖。できたよ。これ」
マイから離れて、視線をテーブル上に移した千聖。
そこには赤黒く染まったコーラが、なみなみとコップに収まっていた。
そのすぐ側にはフライドポテト用のタバスコの瓶。
…自分たちは使ってもいないのに、すでに空だった。
「千聖、許して欲しいなら、コレ飲んでよ。梨沙子も、飲んだら許すって、言ってる」
いや、ソースは?その断言口調のソースは!?
というか、他の3人は明らかに引いているじゃん!
タバスコ入りのコーラ、というより、コーラテイストのタバスコですよ?
マイちゃんの顔はマジだった。真剣、とか、本気、と書いてマジと読む。
もともと彼女は短気な方なのだ。すぐカーッっとなって腕を振り上げたり、喚いたり。
そんな子が、無風状態の湖面のように、静かな微笑をたたえてこちらを見ていた。
駄目だ。これをしないと、絶交される。というかきっと℃-uteに居られなくなるくらいの
そんな切迫した雰囲気を感じた。千聖は天に祈った。
お願い神様!観音様!えーとえーと、栞菜様!助けて!
…残念ながらその頃、栞菜は家で30センチほどの長いウンコをしていた。
千聖はコップを握ると口元に近づける。
ズギャーン!と漂う、突き刺さるような刺激臭。見てるだけで汗がどっと湧き出てきた。
グラスのふちに口をつけ、息を止める。ええい、ままよ!
右手を持ち上げて、メタミドホス、じゃなくてタバスコーラを口内に流し込み、強引に
飲み込んだ。そのまま勢いをつけて2口、3口と含む。
(い、イケるか?意外となんとか……ぐっ、ぐうぅぅぅ!!)
突然、胃の中で炎が燃えさかった。ぷはっ、息を吐き出す千聖。途端、猛烈な痛みが
口から食道へと走り、飲み込もうとしていたコーラを吐き出す。
「げぇ!げほっ!うぎぁっ!うぎゃああああああ!水!水!水!」
ソファーに顔をうずめ、身体を右へ左へと回転させて悶絶する少年。
四文字熟語であらわすなら七転八倒である。みのもんたのような顔のマイ。
「残念!!千聖!じゃあペナルティとして、あたしの言うことをこれから全部
聞くってことでヨロシクね。とりあえずここ出ようか」
金縛りにあったように蒼白な、みやびと千奈美。困惑の梨沙子。
マイはテーブルの伝票を取ると、千聖の背中に乗せ、個室を出た。
◆
カラオケ屋を出ると、みやびと千奈美はそそくさと立ち去った。
まるでこの後に起こるであろう災厄に目をつぶり、耳を塞ぐように…。
(まだ口が痛い…、これからボクどうなるんだろうか…)
活気のある商店街で立ちすくむ3人。
「さて、どうしようか…。梨沙子も千聖にお仕置きしたいよね?」
「えっ…、えーっと、まぁ、そうかもしれない…けど…」
「けど?」
黙ってしまう梨沙子。けど、の続きは「それにしてもマイちゃんはひどい」だと
思いたいところだった。
「というか千聖は、なんで今日ここに来たの?」
マイの質問に、今までのことをまとめて答える千聖。オシッコ飛ばしの件を聞いて
蔑みの視線を向け「バカじゃないの?」と言い捨てる。
「じゃあ…河原に遊びに行こうか。まだ舞美ちゃんと熊井ちゃんがいるかも
しれないしね」
梨沙子はうなずき、千聖にはそもそも選択権が無かった。商店街を抜けて住宅地へ
入り、路地を歩く3人。
それから5分ほど経過した頃。
(…う、うう…やばい…腹が、めっちゃ痛い!さっきのタバスコか…?)
脂汗を流しながら、お腹を押さえて歩く千聖。歩幅が狭くなり、2人のスピードに
ついていけない。唐辛子の痛みは腸へと移り、さらに耐え難いものに変質した。
ググググルルルル…グルググルゲルググ…!
モビルスーツのような音を立てる少年の腹。2人が異変に気づき振り向いた。
千聖はしゃがみこんだまま動かない。
「…千聖、どうしたの?お腹痛いの?」梨沙子が近づいて寄り添った。
「い、痛い、…シャレにならないほど…痛い…出そう、ウンコ出そう」
歯を食いしばり、邪悪なる内なる化身と戦う千聖に、非情なる一言が発せられた。
「しちゃえばいいじゃん、千聖。そこでブリリリ〜ってさぁ!」
千聖は愕然として顔を上げた。養豚場の豚を見る目つきのマイ。
ニヤニヤして笑っている少女。異世界から魔性の存在を呼び寄せてしまったのか?
だが、だが!人間の尊厳にかけても、このズボンを熱く燃え立つ暴虐の排泄物で汚す
ことは阻止したかった。
「…が、我慢する…、行こう…」
「ほんとに、大丈夫?我慢できるの?」
「フフフ…大丈夫さ…心配すんなって、梨沙子。ボクはヘコたれないっ!」
再び歩き始めたマイを追って、フラフラと歩みを進める千聖。
少年には勝算があった。先刻、みやびちゃんを追って河原から走って駅に向かった道。
つまりこの道だが、確か途中に公園があったはずだった。チラリと見た記憶がある。
そして公園にはトイレがあるはず…。
さらにカップヌードルが出来上がるまでの時間、千聖には未来永劫の時間が過ぎ
そのポイントへとようやくたどり着いた。
…そうだ、その角だ。そこを曲がればすぐにあの小さい公園があるはず。
ああ、あった!砂場と、ブランコと、なんだかよくわからない恐竜の形の遊戯用具。
「あれ?さっきの子たち…」
小学校低学年くらいの少年が3人、その恐竜の背中に乗って、喋っていた。
河原の審判団だ。だが、そんなことはどうでもいい、今の千聖には人生において
最優先にして、人間としてまずなすべきことがある。
「あれっ…………?」
無い?無い!無いっ!無いいいいいいっ!
目を見開いて360℃、全てを見渡す。学校の校庭ほども無い、小さな公園。
小さな小屋、トイレット、WC、洗面所、が見当たらない。「うううっ!!」
グルグルググググルグルッ!ゲルググゲルググドムッ!
恐ろしいまでの直腸切迫感に、千聖の肛門括約筋は最大限に絞り上げられた。
「…は、はへっ、はへっ…」
腰が砕け、座りこむ千聖。もう…あと1分、持たない…かも、かも。
その側をマイが通過した。千聖を手招きすると、恐竜の場所に居る子ども達の所に
向かった。梨沙子が少年に肩を貸し、よろめきながら合流する。
マイが審判団に話しかけた。
「ねえ、君たち。ここトイレないけど、いつもどうしてんの?」
「あっ、さっきのチンチン姉ちゃんだ!」
「ほんとだー!なんか病気?具合悪いの?」
「ションベンなら、いつもこの木の影でしてるよ!」
指差した場所は塀の側、大きな木が生えており、周りを低木が囲んでいる。
とは言え、身体を隠すような衝立があるわけでもなく、公園の入り口から普通に
見えてしまうと思われた。マイはしゃがみこんでいる千聖を見据える。
「ほら、千聖ぉ…トイレあったよ。漏らしたら、悲惨だよぉ…」
すでに苦痛のあまり緑色のゾンビ顔千聖。このまま…パンツに漏らしたら。
マイちゃんのことだから、そのまま山手線一周とかさせられかねない。
意を決した少年は、最後の力で立ち上がると、草木をかき分けて塀の側まで歩く。
だが立ちションはともかく、さすがに野グソはためらわれた。女の子だもん。
マイと梨沙子が何やら、ヒソヒソ話しているのも気になる。
「大丈夫だよ、見張ってるから。さっさとしちゃいなよ」と、マイ。
「そうだよ、早く千聖」グゥー!ポーズを取る梨沙子。
その声に後押しされ、千聖は半ズボンとパンツを膝まで下ろし、しゃがみこんだ。
すぐさま最初のブビュゥッ!という爆発音が鳴り響き、第一弾が落下する。
その時、マイが叫んだ。
ご近所の赤ん坊も泣き出すような大声で…。
「ああああああ!ウンコしてる!千聖が、ちーさーとーがー!公園でーウンコして
いるぅぅぅ!!!はーずーかーしーいー!!!」
千聖は凍りついた。煮えたぎる肛門以外の全てが凍りついた。
「えっ!なに野グソ!?」
「チンポコ姉ちゃん野グソぉ!マジマジ?」
「ほんとだぁ!しゃがんでるっ!」
ブボッ、ブリュリュッ、ブチュッ、ブバッ、ゲリリリ、ブビョボボボ……!
千聖の全開放肛門から、五つ☆激辛テイストの大便がとめどもなく排泄される。
「うーんーこ!ハイ!うーんーこっ!ハイっ!」梨沙子が手を叩いて踊っていた。
釣られて審判団もはしゃぎだす。何しろ、チンコとかウンコが面白くてしょうが
ない年代なのだ。千聖が気配に気づき振り向くと、マイは携帯で撮影をしていた。
「やっ、やめてよぉぉ!マイちゃん、ひどいよおおおお!うわああん!」
「泣いてます、千聖、泣いてます。…ハイこれがチッサーのこんもりウンチです」
携帯のレンズをお尻部分に向け、ズームした。形状をとどめない軟便が、刺激臭を
放って鎮座ましましている。最後の便がボブッと出きると、千聖はティッシュを
探してポケットをまさぐった。…無い。カラオケ屋で口を拭くときに使い切って
しまったのだった。
「マ、マイちゃん…うぐっ、ティッシュ、ちょうだい…お願い…ひっく」
鼻水と涙を垂らしながら哀願する少年。この粘りついた肛門で、拭かずにパンツを
履くなんて、勝ち目の無いギャンブルは到底できるものではない。
「…じゃあ、チンチンでお願いしたら、ティッシュあげる」
「へっ?チンチン?」
「そのまま立って、腰を動かしてチンチンで字を書くのよ。やりなしゃい!」
ズボンとパンツを、膝まで下ろした状態のまま立ち上がる千聖。最初は「て」。
腰を左から右へ。そのままカーブして下まで。「て」の形になるのだ。
「あはは!面白い!オチンチン、ぴょこぴょこしてる!千聖、次は『つ』だよー」
梨沙子も、審判団も笑って、ペニス丸出しで腰を動かしている自分を見ている。
ボクは…なんで、なんでこんな目に遭っているのだろう。
そんな疑問を抱きつつ、変態的行為を続ける千聖。下腹部にふと疼きを覚える。
ムクムクと強張っていくペニス。
「あっ、千聖、オチンチン立ってる…」梨沙子が赤面した。審判団は笑っている。
携帯ムービーを撮り続けているマイは近寄ると、直立した愚息を指で弾いた。
「うーん、不真面目ですね千聖。またペナルティ追加だね」
誰か、ホントに、助けてくれぇぇ!
(つづく)
- 2008/03/18(火) 21:49:47|
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