第1便
【フィンガーウォッシュ】
「ふー…」
ジャババッババ…
括約筋を緩めると滝のように小便がほとばしる。
女子トイレ個室内で当然のように行われる光景。
「あっ、お年玉貰うの忘れていた」
そんなことを考えながらトイレットペーパーに手を伸ばす舞美。
しかし、金属製のロールには無慈悲にも2回転程度の紙しかへばりついて
いなかった。
カラ…カラ…とむなしく響く金属音。
「うう…しょうがない…」
舞美はそれを二つ折りにし、慎重に肛門に押し付け、拭き残し確認をする。
…予想外に残便がこびり付いた。
「……」
舞美は眉間に皺を寄せながら二つ折りにしたペーパーを四つ折にし、
再び肛門に押し当てた。
さらに残便がこびり付いた。
肛門周辺全体に残滓がまとわりついているようだ。まずい。
あきらめてそのペーパーを便器内に放り込み、この状況を打破するべく
思案に暮れるのだった。
このままパンツを履けば100%みそパンの出来上がりだ。
さすがにこれから一日過ごすアンダーウェアが「それ」ではテンション下げ子である。
スカートのポケットを探ったがハンカチは無かった。
今履いているパンツで拭いて、ノーパンで過ごすという手もある。
しかし舞美の入った後、必ず栞菜がその個室に入るという定例の儀。
そしてノーパンで過ごすことによる桃子盗撮クライシス。
どれも見過ごしがたいものだった。
舞美はとりあえずコックをひねり、大便を流した。
正直臭かったからである。
ジャバァァァァ……!!
その流れを見たとき舞美の脳裏にガンジス川が閃いた。
あれはいつだったか、中学の地理の授業。
トニー谷に似た社会の先生がインドの話の時に言っていた。
「インド人は川でウンコをしますザマス」
「紙は高級品なので水で拭くザマス」
舞美は愕然として便器を流れる水流を見つめていた。
そうだ、水だ。
よくよく考えてみればお風呂でいつも股間を洗っているじゃないか。
それと同じことだ。
舞美は再びコックをひねると、流れ出る水をひとすくいし肛門周辺にかけた。
「ひゃっ…!」
とても冷たかった。
舞美はその行為を繰り返した。
水を右手ですくい、あてがうように肛門へ。
「聖なる手を使ってはいけないザマス」
そんなトニー先生の声が脳裏に響いた気もしたが、聖いのがどちらの手か、
舞美にわかる由も無い。そもそもすでに舞美の右手指先は大便が付着していた。
さらにコックをひねり新たな水流でその指先を洗う。
もし爪を切っていなかったなら、その先端には香しい固体が残ってしまっただろう。
「舞美ちゃん〜長いよ〜水使いすぎ!大きいのしたの〜?」
栞菜の声だった、正直ウザイと思った。
しかしその頃には舞美の肛門は清浄されており、もし栞菜がその部分に鼻を押し当て
クンカしたところで、生々しいフレグランスを感じ取ることはできなかっただろう。
その点だけは胸を張れる、と舞美は思った。
再び舞美は股間に注目した。
肛門を洗うことはできても、性器に便器の水をかけるのはさすがにためらわれた。
実際には上水道から来る清潔な水だと分かっていても。
性的に奔放な女性のことを「公衆便所女」と表現するフレーズ。
それはここから来るのかもしれないと考えながら。
立ち上がりスカートを軽くはためかせていると、下半身はすっかり乾く。
扉を開けると目の前に栞菜が居た。
「もれちゃうもれちゃう…!」
他の個室は空いているのだが…。
舞美は深く考えないことにした。
いや?待てよ、あの個室にはトイレットペーパーが…。
神に見放された栞菜はどういう行動を取るのだろう?
もとい紙が無いとわかった栞菜はいかなるアクションをするのだろうか?
舞美はきびすを返し、栞菜の入っている個室の前に立った。
シャヮッ!シャ!シュー……シュシュゥ〜
栞菜の小便の音がした。
誰もトイレに居ないと思って音消しをしないのだろうか?
ぼくはここにいるよ♪
舞美はそんな歌謡曲のフレーズを思い出した。
「ふっ…んっ!」
栞菜の小さい声が聞こえる…これはもしや…!
舞美は栞菜がその個室で取り返しのつかないこと。
つまり「大便を排泄する行為」に出たのかどうか、興味津々になった。
気が付けば個室のドアに耳を貼り付けて中を伺っていたのだ。
単なる変質者である。
…息遣いが聴こえる。
栞菜の身体の奥からひりだされる老廃物の「ミチッ…」というミュージック。
思わず舞美の身体にも力が入った。
水面に連なった黄金が積み重ねられ、その人類普遍的な行為は終了する。
ドア越しにその腐敗果実系の臭気が漂い舞美は顔をしかめた。
カラン… 「あっ…!」
舞美は思わずほくそ笑んだ。
さあどうする?栞菜?
その汚物のこびり付いた肛門をどのように処理する?
小便が離散した太もも、まとわりついた虹色の雫、
それらを収めることがあなたにはできるかしら?
舞美自身は気が付いていなかったが、その興奮は舞美の下腹部の芯から
別の分泌物を生み出すほどのものであった。
「…まっいいか!キレがよかったし」
( !!!! )
舞美は耳を疑った。
ジャジャァー…
水の流れる音、衣擦れの音。
信じられない!栞菜!
拭かなかった。この子。拭かなかった!
うんことおしっこまみれのままパンツを履いた!
舞美が離れるのと、ドアが開くのは殆ど同時であった。
舞美は思わず息を呑んだ。鼻から思いっきり。
…周囲がまだ臭かったので再び顔をしかめた。
「あれっ?舞美ちゃんまだいたの?待つんだったら外で待っててくれれば
よかったのに。あっ紙がここ無くなってたんだ。補充しないと! 舞美ちゃんは
紙、間に合ったの?」
…舞美は一瞬ハートブレイクショットを受けたような衝撃を覚えたが
「だ、大丈夫…ポケットティッシュがあったから」
と言うことに成功した。
その日…。
舞美は栞菜の下半身が気になってしょうがなかった。
栞菜が抱きついてくると、いつもより大目に避けるのであった。
しかし一瞬のスキを付かれ、舞美は両手首を握られてしまった。
顔を近づけてくる栞菜。
「舞美ちゃんの指先って色っぽいね…」
聖なる手だからな、と舞美は心の中で思った。
「なんか指からもいい臭いがするみたい…」
それはない。絶対無い。a
がその時。
(!?)
突然栞菜が舞美の指先を咥え、舐め始めた。
「聖なる手」の方だった。
「だっだめよ!栞菜!汚いから!」舞美は後ずさったが
「舞美ちゃんのなら…全然汚くなんてないよ?ね?舞美ちゃん」
ニッコリ笑う栞菜。
(栞菜……恐ろしい子!)
これからはポケットティッシュを携帯することだけは忘れまいと、
強く心に誓う舞美であった…。
(おしまい)
- 2008/01/22(火) 00:21:55|
- 1話〜20話|
-
トラックバック:0|
-
コメント:0